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富士山を頂く東西の電力融通の要と中部電力最大のメガソーラー施設を訪ねる

世界文化遺産・富士山を望む静岡にはさまざまな電力設備が設けられている。ここ清水には、「東清水変電所」と、2015年2月の運転開始に向け建設が進む「メガソーラーしみず」がある。この地を拠点に先端の水産増殖に取り組む東海大学教授の秋山信彦氏に、“地元”の電力設備を初めて訪ねていただいた。

[東清水変電所] 所在地:静岡市清水区広瀬2006年3月、周波数変換施設10万kWで暫定運用開始。’13年2月、周波数変換設備30万kWで本格運用開始。駿河東清水線(60ヘルツ)、富士川線(東京電力・50ヘルツ)と連結。
ナビゲーター 東海大学 教授 秋山信彦 (あきやま・のぶひこ)
東海大学海洋学部水産学科(水産増殖学研究室)教授、東海大学海洋科学博物館・自然史博物館館長。1961年横浜市生まれ。高校から水産の世界に関心を抱く。2006年教授に就任。1999年度日本動物学会論文賞を共同受賞。共著として『タナゴ大全』など。
東清水変電所の画像交流と直流の変換を担う装置であるサイリスタバルブは、周波数変換設備の心臓部分。
周囲の自然や景観に
十分な配慮が施された東清水変電所

静岡市清水区の市街地から車で約5分、突然目の前に、送電線やプラント建屋などが集中した施設が出現する。ここが、中部電力が運営・管理している東清水変電所である。
「私の専門の水産増殖学に関連して、地球環境やエネルギー、資源問題などに常に関心を持ってきました。また、大学の研究室や海洋博物館には、多数の海洋生物を飼育するための水槽があり、大量の電気を使っています。生き物を相手にしているので、少しでも停電があると本当に困るんですよね。何気なく使っている電気に関連した施設を、いろいろ知りたいと思っています」

秋山信彦の画像01変電と周波数変換の役割を担う東清水変電所を見学する秋山氏。

東海大学教授で、海洋科学博物館の館長である秋山信彦氏は、「市街地からはもちろん、山道を走っている間にも気づかない場所にあり、まるで隠し砦みたいだ」とつぶやいた。
青島清和所長に敷地内を案内してもらいながら、もともとすり鉢状のみかん畑だった土地を造成し建設したことを知る。敷地が3段構造(標高112m、116m、118m)になっているのは、傾斜地で山土を運搬する量を減らすための工夫だ。
「当社のどこの施設もそうですが、自然や景観に配慮しています。幸いこの施設は、清水港や清水の市街地から見えない山あいにありますが、近くまで来ても景観が損われることがないよう、各設備やプラント建屋はなるべく低層でコンパクトにし、茶色に塗って周りの自然に溶け込ませています。周囲の山道には桜を植樹し、春の見ごろには近隣の方々に喜んでもらっています」と青島所長が、この施設の自然との共生について説明してくれた。
長年、地元の清水で暮らしてきたという秋山氏は、「変電所と言えばもっと大きな施設を想像していましたが、意外にコンパクトだなと感じたのは、そうした理由があったからですね。ここに変電所があることを知らなかったのは、景観を損ねることなく自然と同化させる配慮が徹底しているからなのでしょう」と語る。

秋山信彦の画像02
電気の流れを表示するパネルの前で説明を受ける秋山氏。
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変電と周波数変換の2つの役割を担う
東西の電力融通の要

東清水変電所の役割は「電圧の変換(変電)」と「周波数の変換」に分かれる。まず、発電所から送られてくる電気を、静岡市方面のお客さまにお届けするいわゆる変電所の役割を担っている。電気を効率よく送電するために高い電圧で送られた電気を、使用目的に合った電圧に下げたり、電気を集約して必要な箇所へ分配、さらには故障した箇所を切り離すなど、電気を効率よく送るために欠かせない施設だ。
そしてもう一つの大きな役割が、周波数を変換すること。日本の電気は、富士川を境に(日本海側は新潟県の糸魚川あたりを境に)、東日本は50ヘルツ、西日本は60ヘルツと周波数が異なる。

秋山信彦の画像03周波数変換の仕組みに熱心に耳を傾ける秋山氏。

東清水変電所では、東西双方から送られてくる周波数の異なる電気のやりとりを行うために、周波数変換設備を使って50・60ヘルツ相互の電力系統を連系し、東西の電力融通を行うポイントとなっているのだ。ちなみに、国内のこうした設備は、東京電力の新信濃変電所と電源開発の佐久間周波数変換所と合わせて3箇所のみ。
周波数変換設備とは、交流をいったん直流にして交流に戻すことによって、異なる周波数の間を連系するシステムのことだ。この複雑な仕組みを理解しようと細部にわたり質問が及ぶ秋山氏。
「東日本大震災のような災害が起これば電力融通が不可欠になる。それだけ重要な働きを担っているだけに、この周波数変換の仕組みをもっと詳しく知りたくなりました」

秋山信彦の画像04
約14万m2の敷地には3万1,464枚のソーラーパネルが設置される予定。
[メガソーラーしみず]

所在地:静岡市清水区三保 出力8,000kW、想定年間発電量約840万kWh(一般家庭約2,300世帯分の年間使用電力量に相当)、敷地面積約14万m2、運転開始予定2015年2月CO2排出量削減量約4,000t/年。

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自前のメガソーラーで再エネ導入をリード

次に秋山氏は、日本三大松原のひとつで、世界文化遺産の構成資産に登録されている“三保の松原”の北側に建設中の「メガソーラーしみず」へ移動。東海大学海洋学部のお膝元でもあるだけに、この施設に対する関心は一層高い。
「メガソーラーしみず」は、2012年10月に新設工事に着手。’11年1月に営業運転を開始した「メガソーラーいいだ」(出力1000kW)、同年10月の「メガソーラーたけとよ」(7500kW)に続く中部電力3番目のメガソーラーで、’15年2月に運転開始予定。8000kWの出力は同社最大となる。中部電力は’20年度までに1万5000kW〜2万kWの太陽光発電の導入を目指しており、「メガソーラーしみず」が運転開始すれば1万6500kWとなり目標が達成される。
約14万平方メートル(ナゴヤドーム約3個分)の広大な建設地を訪ねると、工事が進み、約2万枚(’14年7月時点)のソーラーパネルが1枚1枚、同じ角度、同じ間隔で整然と並べられていた。冬晴れなど空気の澄んだ日なら、並んだパネルの向こうに富士山が望めるという。青く輝くパネルが、清水の海のように富士山を引き立てることだろう。
この施設のソーラーパネルは「清水港みなと色彩計画」に含まれる場所とあって、青系の色が採用されている。同計画は、その地区の建築物などに港とマッチした塗装を施すことにより、富士山を背景とした美しい自然景観と人工景観が調和した港づくりを目的にしたもの。その他、同施設入り口にある電柱が水色に塗られるなど、清水港の景観を損なわない配慮がそこかしこに施されている。CO2を排出しないという大前提と合わせ、まさに環境にやさしい設備と言える。

富士山とソーラーパネルの画像
冬など空気の澄んだ頃には、パネル越しに富士山を望むことができる。(2014年5月撮影)
秋山信彦の画像05
海のいきものや、海の不思議を体感できる東海大学海洋科学博物館。
世界で初めて繁殖に成功したクマノミの水槽の前。他にも大パノラマの水槽、ピグミーシロナガスクジラの全身骨格の展示など見所満載。(静岡市清水区三保2389 tel:054-334-7711)

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東海大学海洋科学博物館の画像
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広大な敷地の有効活用を望む

「広大な設備でありながら発電量が一般家庭2300世帯の年間使用量しかないんですね」と、秋山氏はエネルギー密度の低さに驚いた。
「例えば施設を多段式にし、上をメガソーラー、下を何か別のことに活用すれば土地の有効活用にもつながるのではないかと思います。私が取り組む陸上養殖は海や河川で養殖するのと異なり、非常に大きな電力が必要です。例えば、マグロを養殖する場合、海水をポンプアップすると夏と冬で温度が変化しますが、これを一定にしようとすると莫大なエネルギーを必要とします。私たちは、省エネのため、年間を通して温度が一定な地下海水が取れる三保などいくつかの海岸付近の地点を利用することを検討しています。それでも水を汲みあげるポンプを動かすためのエネルギーが必要です。このエネルギーを施設の上のソーラーパネルから供給されれば地産地消で効率が良くなるのではないでしょうか」
そうした秋山氏の考えは、重要な問題提起と言える。
「最近は、北海道の海でよくシーラやマンボウ、ブリなどの南洋の魚が捕獲されます。その原因が地球温暖化のせいかどうかはまだわかっていませんが、ちょっとした環境の変化で、本来あってはならない現象が地球上のいたるところで起こっています。そうしたことに歯止めをかけるためにも、CO2の削減は非常に大きな課題だと実感しています。そのためにも、再生可能エネルギーの利用技術や開発がさらに進んでいくことを大いに期待しています」
そう締めくくり、今回の見学を終えた。

秋山氏の研究所の画像
秋山氏の研究所には多数の水槽が並ぶ。
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【探訪後記】

秋山信彦の画像06東海大学では、工学部で水素吸蔵合金による冷凍システムを研究したり、海洋学部で波力発電に取り組むなど、再生可能エネルギーに対して熱心に取り組んでいる。ソーラーカーチームは、昨年オーストラリアで行われた「ワールド・ソーラー・チャレンジ2013」で準優勝を果たした。そうしたエネルギーとの密接な関わりを身近に感じている。
私の研究する水産では、マグロを育てるために大量のイワシをエサに使う。食糧増産に直接的にはつながらないが、それでも価値の高いマグロを育てることは必要だ。食糧危機を招かないために、食糧生産には水産だけでなく、農産、畜産などいろんな方法によって、何かがダメなときは、ほかで補足しあっている。それらがバランスよくミックスされることが、食糧事情を安定させるために重要となる。  
食糧は上手に使えば永遠に使える資源だが、使い方を間違えると資源が枯渇してしまう。そういう点で有限資源である化石燃料と共通している。電力も、火力、水力、原子力、再生可能エネルギーのどれが一番いいかということではなく、それぞれの長所を活かし、ベストミックスで電気の安定供給と、持続可能な発展を図っていってほしい(談)。

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