電気のこれからを考える「場」

地中送電線の工事を通じ
都市部の安定供給、
再開発を支える

斎藤 勇治(さいとう・ゆうじ)
中部電力名古屋支店中村電力センター地中線一課主任。1989年4月入社後、東電力所(現中電力センター)地中線課に配属。その後、中央送変電建設所(現工務技術センター)、本店資材部などを経て、2012年より現職。長野県駒ケ根市出身。
岐阜支店 飛騨電力センター

名古屋支店 中村電力センター
地中線一課

担当するエリアの地中送電線は、超高圧の27万5千ボルト送電線が56.7km。中部電力が保有する27万5千ボルト地中送電線の約60%を占める。送電線を通す「管路」の亘長は169.6km、「地下トンネル(洞道)」の亘長は32.0km(共同溝を除く)にも及ぶ。地中線一課は2グループ15名で構成されており、最近は、名古屋駅再開発に伴う新設、保守業務が増えている。

地中線特有の交渉ごとが山積
お客さまが納得された際の達成感は格別

都市や市街地など、架空送電用の鉄塔を新たに建てることが困難な地域では、地中送電線で電気を送る。地上に鉄塔などを建設し、架空送電線を通じて電気を送る方法と比べると、建設コストがかかること、万が一のトラブルの際、故障箇所の復旧に時間がかかることが難点ではあるが、地下に埋設しているため、暴風雨や雷、雪などの自然現象の影響を受けることが少ない。
現在、中部電力エリア内には、名古屋から仙台までの往復距離に相当する約1395キロメートルの地中送電線が張りめぐらされている。その約5分の1にあたる、名古屋駅などの都市部の主要機能への電力供給を支えているのが名古屋支店中村電力センター地中線一課だ。「地中線」という名称の付く保守箇所が設置されているのは、地中送電線が集中する名古屋の都市部を管轄する同センターと、中電力センターの2つ。

斎藤 勇治

地中送電線は、鉄塔の立地が困難な市街地の地下に集中して埋設されている。

「私が所属する地中線一課は、名古屋駅を中心とした名古屋市内西側を担当しています。ここ数年は、特に名古屋駅周辺の再開発に伴うビルの建設ラッシュや、『中央リニア新幹線の駅舎工事』に関連した地中送電線工事に伴う交渉、更新時期を迎えた送電線の改修、撤去、新設工事などが目白押しです」

そう語るのは、中村電力センター地中線一課の工事グループで主任を務める斎藤勇治。1989年に入社後、中電力センターを皮切りに、保守を8年、工事を14年経験してきた地中送電業務のスペシャリストだ。
地中送電線は「管路(かんろ) 」と呼ばれる、電線などを埋設している専用の管のほか、数多くの高圧ケーブルを収納できる地下トンネル( 洞道[どうどう])に収容される(図参照)。トンネルの大きさは送電線の数によって異なるが、多くは内径が約3〜4メートル。送電線の点検や改修、増設が行えるよう、内部には照明・換気・排水設備なども設けられている。

図
巡視

経年に伴う設備更新時期を判断するため念入りな巡視が必要になる。

「道路に例えると、地下トンネルは、車線数が多い幹線、もしくは高速道路。27万5千ボルトを始めとした高圧送電線が走っています。その先で枝分かれする『管路』が一般道にあたります。なお、断線などのトラブルの際は、断線箇所を目視確認できないため、測定器を使ってある程度の位置を特定し、マンホールから地下に入って復旧作業に臨みます」

また、工事には地中送電線ならではの難しさもある。

「最近も、特別高圧の電気を必要とする名古屋駅付近のお客さまへ地中送電線を敷設する工事を担当しました。既設の埋設物の多い一帯であり、送電線を収容する『管路』のルートを確保するためには上水道、ガス管を移動しないと工事ができないことも多く、関係者との交渉の上、ご協力いただくことで、何とか工事を進めることができました」

撤去が必要な地中送電線が埋設されている道路事情は、建設当時(昭和30年代)と比べると激変している。道路幅の拡張工事に伴い、当初は道路端にあったものが、中央分離帯の真下になっていることもあり、大がかりな工事を伴うことも少なくない。
また、さまざまな関係箇所(警察署、通信・ガス会社など)との調整も必要となる。

「道路幅が非常に狭い場合、通行止めにした上で工事を進めたいと思っても、許可が取れないときもあります。その場合には、歩行者用の通路を確保することであらためて許可を得たりするなど、交渉ごとの連続です。先方に納得いただき、お客さまのご理解を得てから工事に着手するだけに、交渉に当たる際は、どの案件・資料に基づいてどういう順番で説明するか、ご理解が得られない場合は、どのようにご説明をすればご理解をいただけるかなどさまざまな想定をした上で臨みます」

移転に伴い不要となった管路を撤去する場合でも、地面を掘り起こさなければならない。

「管路が、お客さまの所有地、民地に埋設されている場合は、お客さまのご事情もあり、難航することが多いですね。関係各所との交渉がうまくまとまったときは格別な達成感があります」

斎藤 勇治

改修、新設工事が立て込む時期は、自ら現場に足を運ぶ機会が増える。

情報共有

市街地の大動脈を預かるだけに日々の情報共有が重要。

信頼度の高い設備構築と日頃の地道な巡視が生きる

2016年10月に東京電力新座変電所(埼玉県)付近の地中送電線が絶縁破壊により出火、東京都の一部地域において停電となる事故があった。このようなニュースを聞くと、斎藤はいつも気が気ではない。
地中送電に使われる電力ケーブルは、中心部分に電力を通す導体があり、その周りを絶縁体で覆うことで電力を絶縁する構造になっている。代表的なのが「CVケーブル」と「OFケーブル」。OFケーブルは電線の周りに油を染み込ませた紙を巻いて金属パイプの中に納め、すき間に油を満たして絶縁する。CVケーブルは電線を架橋ポリエチレンで覆い絶縁するタイプだ。

「OFケーブルは昭和初期から導入されたもので、ケーブル内の油が外へ漏れるリスクや、油の管理などが必要なことから、現在は、CVケーブルへの交換を進めています。当社で使用しているほとんどのケーブルはすでにこのタイプで、信頼度の高い設備を構築することで、電力を高品質で維持し、お客さまのもとへ安全かつ安定的にお送りしています

斎藤 勇治

’16年11月には福岡市博多駅付近で道路陥没事故が発生。この事故もまた、「他人事ではない」と強烈に印象に残ったと、斎藤は言う。
思い出すのは、’00年9月に起きた東海豪雨。記録的な大雨が降り続く中、夜間、地下トンネルの水位異常警報の知らせがあった。

「道路が10〜20センチ浸水しており、翌日、すぐにトンネル内の確認作業を行うと、大量の土砂がわずかなすき間から流入していたんです。緊急で当該箇所の上部にあたる道路を掘削したところ、2立方メートルの空洞が見つかりました。対応が遅れていれば道路陥没事故につながっていたかもしれません」

現場のちょっとした変化や危険予知を働かせ、現場の状況をしっかり確認することで大きなトラブルを未然に防止できる。斎藤にとって身をもって感じる体験となった。

トンネルの入り口

地下トンネルの入り口には、豪雨による水害を防ぐための扉が設置されている。

「先手必勝」と「慌てず平常心」を胸に、
トラブル発生時の早期復旧に臨む

6、7年前、斎藤は体力維持やストレス解消を目的にロードバイクを始めた。休日になると一人で気ままに遠乗りに出かけ、知多半島を約100キロメートル、5〜6時間かけて走ることもある。
「自転車は、車では見えない景色や新しい発見があるし、走る目標を立ててそれを完走したときの達成感は仕事と通じるところがあります」という。

「たまに子どもを誘ってサイクルイベントに参加しています。自転車に乗る楽しさ以外に、長距離を完走したときの『やればできる』という気持ちを知ってほしいという気持ちもありますね」

斎藤が仕事のモットーとしているのは「先手必勝」と「慌てず平常心」。少しでも早く取り組めば、問題発生時も解決するための時間的な余裕ができ、検討の選択肢が増える。時間に余裕がないとき、悪天候や地下構造物の暗い場所で早期復旧にあたる際でも、常に平常心を心掛ければ、的確、迅速に行動できる。この心得は、後輩の育成にも生かしている。中堅クラスとなった斎藤にとって、後輩の指導は大きな課題だ。

「例えば、交渉の段取りについて一方的に説明しても体得するのは難しい。若手を交渉の場に同行させて、自分が説明する姿をみせたうえでポイントなどを伝えています。そして、次回の交渉の場ではこうした指導を踏まえて、本人の言葉で語らせるなど、実践的な教育を心がけています」

地震などの自然災害はいつ起こるか、予測することができないだけに、普段からの心構えが問われる。

「常に『慌てず平常心』と『先手必勝』という気構えで設備に向き合っていきたい。都市部にとって生命線となる電気の安定供給を守っていきたいと思っています」

文・構成/丸上直基 撮影/秦英夫

斎藤 勇治

2016年10月に開催された「愛知県渥美半島ぐる輪サイクリング」では、約70kmを走破。

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