電気のこれからを考える「場」

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変化の時代に対応できる
企業の力としての技術開発への挑戦

大きな環境の変化の中で、新たな領域に挑戦している中部電力にとって、技術開発は未来を切り開く原動力である。
ますます重要性が高まる技術開発の現状と今後の展望について、技術開発本部長である岡部専務に、フリーアナウンサーの長谷川玲子さんが話を聞いた。

中部電力 専務執行役員 技術開発本部長岡部 一彦
(おかべ・かずひこ)長野県出身。
1981年3月慶應義塾大学大学院工学研究科電気工学専攻修了。同年4月中部電力入社。2007年7月経営戦略本部設備総合計画グループ部長、ʼ08年7月執行役員経営戦略本部部長、ʼ10年7月執行役員東京支社長、ʼ13年7月常務執行役員静岡支店長を経て、ʼ16年4月より現職。
フリーアナウンサー/舎鐘(しゃべる)代表取締役長谷川 玲子
(はせがわ・れいこ)静岡県出身。
静岡県立大学国際関係学部卒業。SBS静岡放送に入社し、アナウンサー、報道記者として9年間勤務。独立後、フリーアナウンサー協同組合舎鐘設立(2015年4月株式会社に改組)。ʼ12年早稲田大学大学院公共経営研究科を修了。講演会、シンポジウムなどでも幅広く活躍中。

「変わらぬ使命の完遂」と「新たな価値創出」を
実現させるための技術開発力

長谷川 中部電力を取り巻く経営環境は、これまでにないスピードで変化していますね。

岡部 ご存じの通り、電力やガスの小売全面自由化が始まりました。電力系統には太陽光発電に代表される分散型の再生可能エネルギーが大量に入ってきて、運用形態が従来から相当変わってきました。お客さまから私たちを選んでいただくために何ができるか、そのために必要となる技術は何かが問われています。

今までのビジネスモデルが大きく変わる中、時代や技術の変化に合わせ私たちも進化し、新たな価値を創り出していく必要があります。
ただ、環境が変化しても、「安価で安定した電気を届けてほしい」と、お客さまが期待されることに変わりはありません。電力の安定供給は変わらぬ使命であり、それを果たすために日々懸命に働くことは中部電力のDNAだといえます。
技術開発部門も、安定供給を支える現場の課題解決につながる研究を進めるとともに、事業基盤を強固にし、お客さまニーズを捉えた新たな価値を創り出していきたいと思っています。

岡部一彦

長谷川 どのようなテーマについて研究をされているのですか。

岡部 技術開発本部では約200人が3つの柱となるテーマの研究に取り組んでいます(図1参照)。
1点目は、お客さまに安定した電気をお届けするための研究です。近年増加している太陽光発電などを大量に受け入れた場合でも、電力の消費量と発電量をうまくバランスさせる必要があります。そこで、蓄電池などの有効活用や再生可能エネルギーの地産地消を目指した次世代電力ネットワークの形成に関する研究を行っています(写真1参照)。

【図1】技術開発本部の3つの柱となる研究テーマ
【写真1】安定供給のための研究例

【電力系統シミュレータを用いた系統安定化技術】大量の太陽光発電が既存の発電機の安定運用に与える影響について、自社の電力系統シミュレータを用いて検証し、対策技術の研究に取り組んでいる。

2点目は、お客さまニーズに合わせたエネルギーの効率的な利用を提案するための研究です。当社は工場などお客さまの生産ラインに入らせていただいて、省エネや生産性向上につながる開発一体型ソリューションを展開しており、お客さまから大変喜ばれています(図2参照)。
3点目は、原子力の安全性を向上させたり、廃止措置を進めたり、将来の技術につながる研究です。

【図2】開発一体型ソリューションの例

一歩先を行く技術開発へ果敢に挑戦

長谷川 近年IоT、AI(人工知能)、ビッグデータなどの言葉をよく聞きますが、将来に向けた研究はどうなっていますか。
*IoT:Internet of Thingsの略称。パソコンやサーバーなどのIT関連機器に加え、それ以外のさまざまなモノがインターネットに接続されること。

岡部 いろいろと取り組みを進めています。私たちは、さまざまな電力設備の運転状態に関するデータを保有しています。こうした大量のデータをAIの技術などを活用して、分析・解析していくことにより、設備利用率のさらなる向上や設備保全、故障予知などに役立つ研究を進めています。
また、これからはスマートメーターが各家庭に設置され、個々のお客さまがお使いになる電気の使用に関わるデータを精緻に確認することができます。そのデータを分析することにより、個々のお客さまのライフスタイルにあったエネルギーの使用方法、エアコンなど家電製品の効率的な使い方を提案することができると考えています(図3参照)。
ほかにもポケモンGOで話題となったAR技術を活用し、モニターに映る現場の電力設備に点検情報などを正確に重ねて表示させ、保守作業に役立たせる研究なども進めています。
*AR:Augmented Realityの略称。人が知覚する現実環境をコンピュータにより拡張する技術、およびコンピュータにより拡張された現実環境そのものを指す言葉。

長谷川 いろいろな可能性がありそうですね。

【図3】スマートメーターを活用したお客さまへの提案事例

安心して技術を使っていただく礎となるのは「信頼」

世界的に注目される廃止措置の技術

長谷川 原子力の安全技術に関する研究は、どんなことをされているのですか。

岡部 現在、4つのテーマで研究を進めています(図4参照)。
このうち、代表的な研究例として、津波監視システムや早期地震警報システムの検討を進めています。
また、廃止措置中の1号機のプラント材料について、年数を経た時の変化の調査を進めています(写真2参照)。建設から約40年が経過した1号機に関するこうした情報は貴重です。国内外の学術会議を通じて、そのデータを公開させていただくこともあります。世界中の原子力発電所に提供することで、安全な長期運転に向けての参考になると考えます。

【図4】 原子力安全技術に関する4つの研究テーマ
【写真2】浜岡原子力発電所1号機を活用した研究例

【原子炉圧力容器材料およびコンクリートの健全性評価】1号機実機から構造物の一部を採取し、原子炉の運転や経年による材料特性の変化を調査・研究している。写真はコンクリート試験片の採取の様子。

長谷川 国際貢献にもつながりますね。原子力に関する専門の研究所を静岡県に設立されたそうですね。

岡部 当社としては、これまでも名古屋市にある技術開発本部にて原子力に関する研究を進めてきました。福島第一原子力発電所の事故を受け、さらなる安全性の向上を目指して、震災から1年がたった2012年に浜岡原子力発電所構内に専門の研究所を設置しました。
発電所と研究部署が同じ敷地内にあることで、現場のニーズをしっかり吸い上げ、一体となった研究を推進しています。

長谷川 発電所と研究所が一体になることによって、意思疎通がしやすく、研究・実証・フィードバックがスピーディーにできそうですね。

岡部 この研究所では、自社研究のほか大学や研究機関と連携した公募研究も実施しており、毎年、その研究成果を地域の皆さまにお知らせすることを目的にサイエンス・フォーラムを開催しています。4回目となる今年は7月に開催しました。

岡部一彦 長谷川玲子

強い思いを持つこと
広く交流することが大切

長谷川 技術開発に関して岡部さんが大切にされていることは何ですか。

岡部 研究者たちには、二つのことをお願いしています。
一つは、変化の時代の中で、「これからどういう技術が求められるのか」をいろいろと想像し、「自分たちがどんなことを実現したいか」をしっかり考え、強い思いを持ってほしいということです。「想像力」が「創造力」につながると思っています。
もう一つは、多様な方々と交流して、その知見・経験・技術を吸収していってほしいということです。交流の場に自主的に参加し、新たな研究の芽を見つけ、失敗を恐れず挑戦していってほしいですね。社内の仲間はもちろん、大学、メーカーをはじめ幅広い分野に精通されている方々と交流し、力を一つにしていけば、自分一人ではできないことも実現できるようになるのではないでしょうか。

長谷川 今まで研究というと、単独で一つのことに集中するようなイメージがありました。

岡部 専門性を高め、一つのことを深く掘り下げていくとともに、外の世界と交流して研究の幅を広げていくことも大事だと思っています。

長谷川 創り出す力と熱い思いが伝わってきますね。中部電力の新しい研究を知れば、「きっとこんなこともしてもらえるかもしれない」という期待が膨らみますね。
ただ、研究というと難しいというイメージがあります。研究成果を、なるべくわかりやすい言葉で伝えていただけるとうれしいですね。

岡部 そうですね。技術開発本部の幅広い研究をご理解いただく場として、テクノフェアというイベントを開催しています。毎年3,000名を超える方々にお越しいただいており、今年も多くの方に実際に見て聞いていただけたらと思います(写真3参照)。

【写真3】過去のテクノフェアの開催状況

<2017年度の開催予定>
日時:2017年10月26日(木)・27日(金) 9:30~16:00
場所:名古屋市緑区
中部電力(株)技術開発本部構内
テーマ:一緒に考えたい エネルギーの未来 ~新たな価値創出への挑戦~

長谷川 参加されたお客さまの反応はいかがですか。

岡部 ご来場されて「中部電力っていろいろなことをやっているんですね」と驚かれる方もいらっしゃいます。テクノフェアで私たちが行っている研究の内容を丁寧にご説明させていただくことにより、新たなビジネスにつなげていくことができたら良いなと思っています。

長谷川 「エネルギーのことならやっぱり中部電力!」と思ってもらえるきっかけになるかもしれませんね。

岡部 そうだとうれしいですね。
技術開発は一朝一夕に成果が結実するものではありません。実直に進めることで時代の変化にも応え、信頼を得ていきたいと思っています。
しっかりと技術を確立した上で、その研究内容をお客さまに分かりやすい言葉で丁寧に説明し、ご意見をいただくことで信頼を高めていく。遠回りかもしれませんが、地道な活動こそが、結果的にはその技術への信頼を高めることにつながります。安心して技術をお使いいただく礎は、信頼であると強く思っています。

文・構成/森 一市 撮影/水谷 文彦

岡部一彦 長谷川玲子
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