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浜岡受け入れ 50年特別対談
地域の皆さまとの信頼関係なくして
浜岡の50年はなかった

浜岡原子力発電所の建設について、旧浜岡町に受け入れを決定していただいてから、今年9月で50年を迎えた。地域からの誘致ではなく、電力会社から申し入れを行い建設させていただいた唯一の発電所として、大きな覚悟やさまざまな思いを抱えてきた地域の方々。その地域の皆さまと中部電力とのこれまでの歩みを振り返るとともに、今後に向けた今の決意や思いを、倉田副社長にフリーアナウンサーの長谷川玲子さんが聞いた。

フリーアナウンサー/舎鐘(しゃべる)代表取締役長谷川 玲子
(はせがわ・れいこ)静岡県出身。
静岡県立大学国際関係学部卒業。SBS静岡放送に入社し、アナウンサー、報道記者として9年間勤務。独立後、フリーアナウンサー協同組合舎鐘設立(2015年4月株式会社に改組)。’12年早稲田大学大学院公共経営研究科を修了。講演会、シンポジウムなどでも幅広く活躍中。
中部電力 代表取締役副社長倉田 千代治
(くらた・ちよじ)三重県出身。
1980年3月東京大学大学院工学系研究科舶用機械工学専門課程修了後、中部電力入社。’94年浜岡原子力総合事務所浜岡原子力発電所課長、’96年同保修管理課長、’98年同担当副部長兼技術課長、’99年三重支店松阪営業所長、2002年浜岡原子力総合事務所広報グループ担当部長を経て、’08年執行役員浜岡原子力総合事務所浜岡地域事務所長。’14年取締役専務執行役員浜岡原子力総合事務所長。’17年より現職。

「つくらせて良かった」と
思っていただける発電所を目指して…

長谷川 倉田さんは、長きにわたってさまざまな立場で、浜岡原子力発電所での業務に携わってきたそうですね。

倉田 はい。初任地が浜岡原子力発電所でした。発電課で運転技術やプラント全体の設備を覚えることから始まり、保修課で原子炉まわりの設備メンテナンスを中心に学んだほか、広報や地域対応、地域事務所長や総合事務所長など、37年の会社人生の3分の2くらいは浜岡に勤務してきました。

長谷川 そうしますと、浜岡の歴史とともに、今日まで歩まれてきたということになりますね。

倉田 そう言っていただけるとうれしいですね。私はともかくとして、浜岡の歴史を振り返りますと、受け入れを決定していただいてから50年。事前の土地調査や話し合いなどの期間を含めると、地域の皆さまと中部電力とのお付き合いはさらに長いものになります。半世紀以上にわたりご理解とご協力をいただき大変感謝しています。
浜岡原子力発電所1号機の起工式の際に、当時の河原崎浜岡町長からいただいた「中部電力が日本に誇る施設をつくることを信じ、数年後、わが地域から受け入れて良かったという感謝と祝福の気持ちが出ることを期待している」というお言葉は、代々語り継がれています。地域の皆さまに「つくらせて良かった」と思っていただける発電所にしようという思いは、所員全員で共有してきたつもりです。

倉田千代治 長谷川玲子

長谷川 地域の方々と接する中で印象的な出来事はどんなことですか。

倉田 印象的と申しますか、より一層襟を正さねばと思った出来事があります。
廃止措置に際して、1・2号機の使用済燃料を4・5号機に移す作業をしていたときです。その燃料の中に、過去に損傷した使用済燃料が一体ありました。発生当時、当然、国へ報告し公表もしていたことだったのですが、その後の調査状況については、地域の方々への十分なご説明がなかったことから厳しいご指摘を受けたことがございます。「建設を受け入れて以来、中電と我々は相互信頼のもと、事の大小にかかわらずなんでも言い合える関係だと思ってきた。中電が安全に対して、しっかりと取り組む姿勢をずっと見てきた。にもかかわらずこの件は初めて聞く話で非常に残念だ」と目を潤ませながら語られました。きちんと伝えきれていなかった申し訳なさはもちろんのことですが、その憤りは、中電ならどんなことでも伝えてくれているはずだという信頼の裏返しであることが、ひしひしと伝わってきて、逆にとてもありがたく感じたのを覚えています。細部までしっかりと丁寧に直接顔を見てご説明することが、信頼関係の要であることを改めて痛感した出来事でした。

1967年当時の敷地全景

1967年当時の敷地全景

敷地全景(1976年)

浜岡原子力発電所1号機営業運転開始当時の敷地全景(1976年)

1号機原子炉格納容器据え付け(1972年)

1号機原子炉格納容器据え付け(1972年)

浜岡原子力発電所「協力の森」にある記念碑

浜岡原子力発電所「協力の森」にある記念碑。建設当時、発電所敷地をご提供いただいた方々のお名前が記されている

地域の方の声をじかに聴くことで
「地域を守る」という意識が高まる

長谷川 福島第一原子力発電所の事故によって、社会的に原子力への不安が高まりました。地域の方にも不安を抱いておられる方は多いと思いますが、いかがですか。

倉田 建設時をはじめとして半世紀の間にはさまざまな難局もありましたが、今が最も厳しい局面かもしれません。だからこそ、福島第一のような事故は二度と起こさないという固い決意のもと、原子力部門のトップとして先頭に立ち、覚悟を持って難局を乗り切りたいと思っています。地域の皆さまのご不安を、しっかりと受け止め、その思いに応えるためにも安全性向上に向けて全力で取り組んでいるところです。

長谷川 具体的にはどんな取り組みをされているのですか。

倉田 津波対策や重大事故などの対策を進めるとともに、新規制基準を踏まえた対策を行い、安全性の一層の向上に努めています。安全対策に終わりはなく、常に最新の知見をもとに「できることは全てやりきる」覚悟で、今後も継続して取り組んでいきます。
設備対策をしても、やはり操作するのは人間ですので、いざというときの対応力を向上させるための日々の訓練もしっかり行っています。
さらに、こうした取り組みを丁寧にお伝えし、理解を深めていただく活動にも取り組んでいます。

防波壁
防波壁

防波壁:海抜22m、総延長約1.6kmの壁で発電所敷地を取り囲み、両端部は海抜22~24mの改良盛土を設置。岩盤の中から立ち上げた鉄筋コンクリート造の地中壁基礎の上に、鋼と鉄骨・鉄筋コンクリートを組み合せた構造のL型の壁部を結合するなど、地震や津波に対して粘り強い構造としている

ガスタービン発電機
ガスタービン発電機

ガスタービン発電機:津波の影響を受けにくい海抜40mの高台に設置。送電線による外部電源や原子炉建屋内の非常用ディーゼル発電機が使えなかった場合に備えた電源

緊急時対策所
緊急時対策所

緊急時対策所:現在も新規制基準への適合性審査に係る一部の工事は継続しているが、建物本体は2017年3月に完成。建物は鉄筋コンクリート製で、壁や天井の厚さを最大2mまで厚くすることにより、緊急時対策所外の放射線に対する遮へい性を高めている

2016年度の訓練
2016年度の訓練

設備対策の強化に加え、扱うのは人であるという考えのもと、設備を有効に機能させるための現場対応力の強化 にも取り組み、2016年度の訓練回数は年間約700回に及んだ

働く人が信頼されないと
中部電力も原子力も信頼されない

長谷川 対話活動に力を入れていらっしゃるのですよね。

倉田 はい。松阪営業所時代に、お客さまとじかに接して、「電気は発電するだけでなく、お客さまに届けてこそ価値がある」「発電の先にはお客さまの生活や笑顔がある」ということを実感しました。また、電気温水器の販売では、お客さまのニーズをお聴きすることで購入につながるという経験もしました。地域との対話という意味では、ここが原点だったとも言えます。
お客さまの顔を見て生の声を聴くことが大事だという自分の経験も踏まえ、浜岡地域事務所長のとき、技術系の発電所員も参加した「訪問対話活動」を恒常的に行うようにしました。発電所で働いている人を信じてもらえなければ、中部電力も原子力も信用してもらえないと思ったからです。

倉田千代治

同時に、運転や保守などに携わる発電所員が地域の方の生の声を直に聴くことが、所員の安全への意識向上につながると考えたからでもあります。自分たちが行っている安全対策は、「モノ」ではなく「人」を守り、地域の方々の思いに応えるためなのだという目的意識が明確になることで、さらに気を引き締めて安全対策に臨めると思いました。

長谷川 原子力への不安の軽減につながりそうですか。

倉田 当然ながら、福島第一の事故以降、不安を抱えている方々のお気持ちやお考えをじかに会ってお聴きすることもあります。その中で「原子力発電所というものはこういうものです」「このような安全対策を実施しています」「私たちは今、こういう信念を持って取り組んでいます」といったお話もさせていただきます。そうした対話を通じて、お伺いした所員に対しても、中部電力に対しても「これは信頼できるな」と少しでも感じていただければ、そこから次のコミュニケーションが生まれると思っています。

長谷川 意見交換会もなさっていると聞きましたが。

倉田 意見交換会は、5〜6人のグループの中に当社社員も1〜2人が参加し、車座でディスカッションするものです。私たちが一方的に説明をするのではなく、厳しいご意見から素朴な疑問まで自由にお話しいただきます。原子力に対して慎重な方も中部電力も共に「街を発展させたい」「暮らしやすい街をつくりたい」という思いは一緒ではないでしょうか。膝を突き合わせて意見を交換する中で「ああ、中電の意見はそういうことか。共通しているところもあるな」とお互いの理解がさらに深まっていければと思っています。

訪問対話

訪問対話:発電所周辺四市(御前崎・牧之原・菊川・掛川市)にお住まいの方(約84,000戸)を対象に2014年から実施し、現在、3巡目を実施中

意見交換会

意見交換会:2015年度より周辺四市の方を対象に開催。2016年度は地区意見交換会24回、女性団体との意見交換14回を実施。2017年度より商工会や青年部との意見交換会も実施している

発電所キャラバン

発電所キャラバン:大型量販店などで可搬型設備(大容量送水ポンプ車など)の展示や説明ブースを設けて行う対話活動。2016年度は19回開催し、1,939名の方に参加いただいた

長谷川 最後にこれからの将来に向けて、決意をお聞きできますか。

倉田 まずは安全が大前提ですが、経済性や環境への問題、エネルギーセキュリティーといった点からも、原子力そのもののメリットは今後も変わることはないと考えています。原子力発電は安定供給を支える電源の一つです。しっかりと取り組んでいきます。安全を最優先に、地域の方に「つくらせて良かった」と感じ続けていただける発電所を目指して、全員が一丸となって、あらゆる努力を惜しまない覚悟です。

文・構成/森 一市 撮影/水谷 文彦・上木 鉄也

倉田千代治
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